わかってるからこそ、送れない

 

手軽に遠くの人と連絡が取れる時代。

 

かつての好きだった人、いや初恋の人に、「あけましておめでとう」を送りたい衝動に駆られたまま日付は1月2日になった。

 

彼は別れてからの方が律儀な人だ。

わたしが誕生日に連絡をしたときは、わたしの誕生日に連絡をくれる。

誕生日を伝えた記憶はないから、おそらくFacebookからの情報であろう。

 

過去を思い出しては苦しさに悶える日々の中に、初々しいもどかしかった彼との思い出が突出して癒しとなる。

 

当時、彼の気持ちがわからず「すき」の一言が聞きたいがためにあの手この手を使った挙句に白黒つけたくなり、本人に聞こえるように、教室で友達に「失恋したら髪を切る」宣言をした。付き合った翌年度の3学期の終わりのことだった。

 

春休み、当時生徒会で集まり一緒に作業する機会があった。2人きりのチャンス、わたしは彼に最後の問いかけをした。

「わたしのことすき?」

返事はなかった、なんとなく濁されたような記憶。諦めることにした、好きでいることを。

春休み中に髪を切った。

次の登校は春休み明けだった。

自ら終わりを選んだが、好きな気持ちは消えたわけじゃなかった。だからずるいことをした。

 

曖昧に終わらせたように、自然消滅を装った。

共通の男友達に「もう終わったのかな」ということを聞いてもらった。その時にはもう、他の同級生からアプローチを受けていた。

「全て終わらせてからね」なんて、上から目線のわたし。

 

でも、純粋に好きなのはその初恋の彼だった。

往生際悪く5月に行く修学旅行で、スポーツの神様をコースに組み込んだ彼に、わたしの分のお守りを頼んで、ホテルの階段ですれ違うときにこっそりお金と気持ちを託した。

 

修学旅行帰宅の日、お守りを友達経由で受け取った。その年の夏の地区大会は幸いにも優勝した。

 

でももう優勝した頃はアプローチを受けていた人とお付き合いを始めていた。

とにかくずるかった、寂しさから愛される方を選んでみたのだ。曖昧な始まりなのに、わざわざ記念日をつくったような記憶。

初カノという立場を利用した。

 

 

初恋の人とは以前と変わらぬ距離感で生徒会で関わっていた、何ごとも起きなかったかのように。

 

 

 

うまくいかなかった中学時代。

メールをしていた高校時代。

再会をした成人式。

 

そして小学校卒業後10年のときに地元にいる彼に、当時の担任との連絡を託した。タイムカプセルを10年後に開けようというのを実行するしきり役がいなかったから。

グループラインも作った。しかし企画倒れした。

 

それが気にかかったまま、数年経ち20代最後の年度に入る今年がきっかけになるのではなんて考えてしまう。

 

どうしても抜けない、地元が絡むと学級委員の体質がよみがえって。

 

かといって世間話していいのかやぁなんて、少し悩む。

成人式以来会っていない。ほんとは今なら少しは話せるんじゃないかって期待もしてしまう。

でもそこに恋愛感情ではなく、単なる興味が付随する。

 

律儀で優しい彼に負担を増やすのはもう嫌だなと思いながら、文をしたためている。