寝息を聞きながら眠りにつけるような関係になりたかった。
小学生のころ、音楽の授業が難しくて苦手だった。音符は読めないし、言ってることよくわかんないし。
でも歌う事は好きで、いつのまにか合唱だけは全力でやるようになっていた。音楽を特別視はしていなかったいい子ちゃん。
流行というものだけで音楽を聞いていた子供時代から、自分の好みで音楽を聴くようになった思春期。
1つのバンドをとても好きになった。
後にも先にも、こんなに引き寄せられることはないんだろうなって。まさに恋に落ちたような、運命の出会いのような。
ロックに救われたし、きっとこのバンドを救った。ファンという概念からはずれた自分がちゃんと応援したバンド。
歪な思春期、父親の怒鳴り声から逃げるためにイヤフォンから流していた。
当時付き合っていた彼氏に、機能不全家庭だとは話せず友達にもなにも言えず、可哀想な子になりたくなくてひたすらに耐えた。
ただひとりで泣いていた。
わたしなど生まれなければよかったと、死ねと言ってはダメならわたしが消えればいいと。
自分を否定することが自分の存在を確認する唯一の術だった。
とにかく苦しくて、縋り方もわからなくて、関わる男の人は自分を傷つける存在だと思い込んで生きるしかできなかった。
ただただ怖くて逃げることさえできなくて。
現実逃避のためだけに流していた音楽だった時もあった。
でもいつでもその音楽はわたしを肯定してくれた。どんなわたしでも。
高校2年生のときに初めてライブというものに行った。クラスの友達と4人で。
高校3年生、ファンクラブライブというものに行きたくてお母さんと東京と名古屋へ。
人気だからチケット取れないかもと二箇所申し込んだら両日当選。
名古屋はオールスタンディングライブなのに、二階席の最前列端。ボーカルの目線の置き場ですごい席だった。
某飲料メーカーの新人発掘イベントのゲストアクトでライブにすっかりハマったわたしは申し込む。完全無料招待のみのライブに無事当選、整理番号004と考えてみれば運は全てチケットに。
順調にそのバンドを好きになった、とにかく追いかけた。CDは予約して、雑誌は出る日に書店へ、ラジオはMD録音しながら同時聴取。
検索もいっぱいして、少しでも情報を拾いたくて。
配信限定なら着うたフルを、PVのショートバージョンを着信に。
まっしぐらで、いつしか中高付き合った彼氏とも別れて、歪んだ感情でサークルの男の子と付き合って。
一緒にライブに行ったり、意外とちゃんと青春ごっこをした。
でも得られなかった感情を今になって。
解散して約1年半して、まさかこんなに話す日がくるなんて。
好きすぎて否定されることがこわかったから、100で好きなことを言えなかったのが、まさかこんなに近くに。
ちゃんと評価されていた。愛されてたよ。
そしていまも、みんな大好きだから。
こわがらずに、彼らが音楽を続けられますように。